製造間接費:予定配賦・予算差異・配賦差異をつかむ
製造間接費を製品へ配る理由、予定配賦率、固定予算と変動予算、配賦差異の原因と処理を整理します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
予定配賦率を計算し、実際発生額・実際操業度・予定額の差を配賦差異として説明できる。
- 予定配賦を行う実務上の理由を説明できる。
- 固定予算と変動予算を使い分けられる。
- 配賦差異の処理先を選べる。
前提知識
- 原価三要素、直接費・間接費、仕掛品勘定の基本。
ひとつ前の講:工業簿記の全体像と原価三要素:原価が製品へ流れる仕組み
要点
- 間接費は個々の製品へ直接追跡できないため、配賦基準を用いて製品へ配る。
- 予定配賦率は予定額を予定操業度で割って求め、実際操業度を掛けて配賦額を計算する。
- 配賦差異は実際発生額と予定配賦額のずれであり、配賦不足か配賦超過として把握する。
- 差異の原因を見るときは、支出のずれと操業度のずれを分けて考える。
判断のルール
- 予定額を確認し、次に予定操業度を確認して予定配賦率を求める。
- 予定配賦率に実際操業度を掛けて、当期に仕掛品へ配賦する額を計算する。
- 実際発生額と予定配賦額を比較して、配賦不足か配賦超過かを判定する。
- 配賦差異は基本的な問題では売上原価へ処理する。
例題
例題1予定配賦率を求めて配賦不足を処理する例
ある工場では、製造間接費の予定額を480,000円、予定機械時間を2,400時間としている。当月の実際機械時間は210時間、実際発生した製造間接費は44,000円で、すべて現金で支払った。月末に予定配賦を行い、配賦差異は売上原価へ処理する。必要な仕訳を示しなさい。
答え(実際発生)借方:製造間接費 44,000/貸方:現金 44,000 (予定配賦)借方:仕掛品 42,000/貸方:製造間接費 42,000 (配賦差異を売上原価へ処理)借方:売上原価 2,000/貸方:製造間接費 2,000
考え方まず予定配賦率は、480,000円÷2,400時間=1時間あたり200円です。次に、当月の実際機械時間210時間に200円を掛けて、仕掛品へ配賦する予定配賦額は42,000円となります。実際発生額は44,000円なので、実際発生額のほうが2,000円多く、配賦不足です。実際発生時は製造間接費を集計し、予定配賦時は仕掛品へ振り替えます。最後に残った借方残高2,000円を売上原価へ振り替えれば処理が完了します。
確かめ予定配賦率200円×210時間=42,000円。実際発生額44,000円との差は2,000円。製造間接費勘定は、借方44,000円、貸方42,000円と2,000円で一致する。
例題2配賦超過になる基本例
製造間接費の予定額は600,000円、予定機械時間は3,000時間である。当月の実際機械時間は260時間、実際発生した製造間接費は50,000円で、未払金として計上した。月末に予定配賦を行い、差異は売上原価へ処理する。必要な仕訳を示しなさい。
答え(実際発生)借方:製造間接費 50,000/貸方:未払金 50,000 (予定配賦)借方:仕掛品 52,000/貸方:製造間接費 52,000 (配賦差異を売上原価へ処理)借方:製造間接費 2,000/貸方:売上原価 2,000
考え方予定配賦率は600,000円÷3,000時間=1時間あたり200円です。これを実際機械時間260時間に掛けると、予定配賦額は52,000円になります。実際発生額は50,000円ですから、予定配賦額のほうが2,000円多く、配賦超過です。したがって製造間接費勘定には貸方残高2,000円が残ります。この貸方残高をなくすには、製造間接費を借方、売上原価を貸方として処理します。配賦超過は売上原価を減らす方向になることも確認しておきましょう。
確かめ予定配賦率200円×260時間=52,000円。実際発生額50,000円との差は2,000円の配賦超過。製造間接費勘定は、借方50,000円と2,000円、貸方52,000円で一致する。
例題3固定費と変動費の内訳を見て予定配賦する例
ある工場では、製造間接費の年間予算を、固定費360,000円と、機械時間1時間あたり120円の変動費で見積もっている。年間予定機械時間は2,000時間である。当月の実際機械時間は180時間、実際発生した製造間接費は固定費31,000円と変動費22,000円の合計53,000円で、すべて現金で支払った。月末に予定配賦を行い、差異は売上原価へ処理する。必要な仕訳を示しなさい。
答え(実際発生)借方:製造間接費 53,000/貸方:現金 53,000 (予定配賦)借方:仕掛品 54,000/貸方:製造間接費 54,000 (配賦差異を売上原価へ処理)借方:製造間接費 1,000/貸方:売上原価 1,000
考え方まず年間の予定製造間接費は、固定費360,000円に、変動費120円×2,000時間=240,000円を加えて600,000円です。したがって予定配賦率は600,000円÷2,000時間=1時間あたり300円となります。当月の予定配賦額は300円×180時間=54,000円です。実際発生額は53,000円なので、予定配賦額のほうが1,000円多く、配賦超過です。問題文に固定費と変動費の内訳があっても、まず総予定額を組み立てて予定配賦率を求め、そこから実際操業度で配賦額を出す流れは同じです。
確かめ年間予定額は360,000円+240,000円=600,000円、予定配賦率は600,000円÷2,000時間=300円。300円×180時間=54,000円。実際53,000円との差1,000円は配賦超過で、仕訳後に製造間接費勘定は残高ゼロになる。
よくある間違い
実際発生額をそのまま仕掛品へ入れてしまい、予定配賦の手順を飛ばしてしまう。
予定配賦率の分母に実際操業度を使ってしまい、予定配賦率を誤って計算する。
配賦差異を求める前に、実際発生額と予定額だけを比べて結論を出してしまう。
配賦不足と配賦超過の向きを逆に判断し、売上原価への処理を反対にしてしまう。
この講の用語
- 製造間接費せいぞうかんせつひ
- 製品ごとに直接追跡しにくいため、一定の基準で配賦して製品原価に入れる工場原価。
- 予定配賦率よていはいふりつ
- 予定された製造間接費を予定操業度で割って求める、配賦のための単価。
- 固定予算こていよさん
- 一定の操業度を前提に総額を定め、操業度が変わっても予算額を動かさない考え方。
- 変動予算へんどうよさん
- 操業度の増減に応じて、変動費部分を調整して予算額を組み替える考え方。
- 配賦差異はいふさい
- 実際発生額と予定配賦額との差額で、配賦不足または配賦超過として表される。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:22中心概念2級の製造間接費、予定配賦、予算、配賦差異と基本的な差異処理を扱う。
- 1:16重要用語製造間接費、予定配賦率、固定予算、変動予算、配賦差異
- 2:02基本ルール予定額を確認し、次に予定操業度を確認して予定配賦率を求める。 予定配賦率に実際操業度を掛けて、当期に仕掛品へ配賦する額を計算する。 実際発生額と予定配賦額を比較して、配賦不足か配賦超過かを判定する。 配賦差異は基本的な問題では売上原価へ処理する。
- 2:28判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:15確認ケース1ある工場では、製造間接費の予定額を480,000円、予定機械時間を2,400時間としている。当月の実際機械時間は210時間、実際発生した製造間接費は44,000円で、すべて現金で支払った。月末に予定配賦を行い、配賦差異は売上原価へ処理する。必要な仕訳を示しなさい。
- 3:42確認ケース2製造間接費の予定額は600,000円、予定機械時間は3,000時間である。当月の実際機械時間は260時間、実際発生した製造間接費は50,000円で、未払金として計上した。月末に予定配賦を行い、差異は売上原価へ処理する。必要な仕訳を示しなさい。
- 5:20確認ケース3ある工場では、製造間接費の年間予算を、固定費360,000円と、機械時間1時間あたり120円の変動費で見積もっている。年間予定機械時間は2,000時間である。当月の実際機械時間は180時間、実際発生した製造間接費は固定費31,000円と変動費22,000円の合計53,000円で、すべて現金で支払った。月末に予定配賦を行い、差異は売上原価へ処理する。必要な仕訳を示しなさい。
- 6:44よくある誤り実際発生額をそのまま仕掛品へ入れてしまい、予定配賦の手順を飛ばしてしまう。 予定配賦率の分母に実際操業度を使ってしまい、予定配賦率を誤って計算する。 配賦差異を求める前に、実際発生額と予定額だけを比べて結論を出してしまう。 配賦不足と配賦超過の向きを逆に判断し、売上原価への処理を反対にしてしまう。
- 8:52まとめ製造間接費は製品へ直接たどれないため、予定配賦率を用いて仕掛品へ配賦します。予定配賦率は予定額÷予定操業度で求め、これに実際操業度を掛けて予定配賦額を出します。その後、実際発生額と比較した差が配賦差異です。差異は支出面と操業度面のずれとして考え、基本的な処理は売上原価で整理します。手順を順番どおりに追うことが得点の近道です。
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