原価の全体構造・費目別計算会員向け9:09

工業簿記の全体像と原価三要素:原価が製品へ流れる仕組み

材料費・労務費・経費を直接費・間接費に分け、仕掛品から製品、売上原価へ流れる工業簿記の全体像を整理します。製造原価と販売費及び一般管理費の違い、費目別計算の役割、主要勘定の増減も合わせて確認します。

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この講で分かるようになること

材料費・労務費・経費を直接費・間接費に分け、原価が仕掛品・製品・売上原価へ流れる仕組みを説明できる。

  • 製造原価と販売費及び一般管理費を区別できる。
  • 費目別計算・部門別計算・製品別計算の役割を説明できる。
  • 工業簿記の主要勘定の増減を追える。

前提知識

  • 簿記3級の仕訳、資産・費用・収益の基本。

要点

  1. 原価は材料費・労務費・経費の三要素に分けて把握する。
  2. 直接費・間接費は製品へ直接追跡できるかどうかで判断する。
  3. 製造原価はまず仕掛品に集まり、完成すると製品へ振り替わる。
  4. 製品が販売されたときに、はじめて売上原価として費用化される。

判断のルール

  • 何に使った費用かを最初に確認する。
  • 次に、その費用が製品へ直接追えるかどうかで直接費と間接費を分ける。
  • 製造に関する原価だけを仕掛品へ集計する。
  • 販売費及び一般管理費は製品原価に入れない。

例題

例題1材料購入から消費までの基本

ある工場で材料を100,000円現金で購入した。その後、このうち70,000円を製品Aの製造に使用し、20,000円を工場共通の補助材料として使用した。残りは月末に材料として残っている。必要な仕訳を示し、直接材料費と間接材料費の違いも確認しなさい。なお、数字は説明用の仮定である。

答え(材料購入)借方:材料 100,000/貸方:現金 100,000 (直接材料の消費)借方:仕掛品 70,000/貸方:材料 70,000 (間接材料の消費)借方:製造間接費 20,000/貸方:材料 20,000

考え方まず購入時は、まだ使い道が確定していないので材料という資産で受けます。次に、製品Aにどれだけ使ったかがはっきり分かる70,000円は直接材料費であり、製造中の原価として仕掛品に入れます。一方、工場共通の補助材料20,000円は特定製品へ直接追えないため、間接材料費として製造間接費に集めます。ここでは、材料費かどうかを確認し、その後で直接追えるかを見て、仕掛品か製造間接費かを判断しています。

確かめ材料の減少額は70,000円と20,000円の合計90,000円で、購入100,000円との差額10,000円が月末残高になる。仕訳ごとに借方と貸方は一致している。

例題2賃金のうち直接労務費と間接労務費を分ける

当月、工場で賃金200,000円を現金で支払った。このうち150,000円は製品の加工作業に直接従事した工員の賃金、50,000円は工場監督者の賃金であった。必要な仕訳を示し、どの勘定に入れるべきか説明しなさい。なお、数字は説明用の仮定である。

答え(賃金支払)借方:賃金 200,000/貸方:現金 200,000 (直接労務費の振替)借方:仕掛品 150,000/貸方:賃金 150,000 (間接労務費の振替)借方:製造間接費 50,000/貸方:賃金 50,000

考え方支払時点では、まず賃金としてまとめて処理します。その後、内容に応じて振り替えます。製品の加工に直接従事した工員の賃金150,000円は、どの製品のための労務か把握しやすいので直接労務費となり、仕掛品へ入ります。工場監督者の賃金50,000円は製造には関係しますが、特定製品へ直接結び付けにくいため間接労務費として製造間接費に集めます。工場で発生したから全部を仕掛品に入れるのではなく、直接追えるかどうかで分けるのが判断の中心です。

確かめ賃金200,000円は150,000円と50,000円に全額振り替えられている。賃金勘定の残高は0円になり、仕掛品と製造間接費への配分合計も200,000円で一致する。

例題3仕掛品から製品、製品から売上原価への流れ

月末時点で、当月に仕掛品へ集められた製造原価は300,000円であった。このうち240,000円分が完成し、残りは未完成のまま月末に残った。さらに、完成した製品のうち180,000円分が当月中に販売された。完成時と販売時の仕訳を示し、仕掛品と製品の違いを説明しなさい。なお、数字は説明用の仮定である。

答え(製品完成)借方:製品 240,000/貸方:仕掛品 240,000 (製品販売分の原価振替)借方:売上原価 180,000/貸方:製品 180,000

考え方当月に仕掛品へ集められた300,000円は、製造中の原価です。そのうち完成した240,000円は、未完成ではなくなったため仕掛品から製品へ振り替えます。残り60,000円は未完成なので仕掛品に残ります。次に、完成して在庫になっているだけでは費用化されません。販売された180,000円分だけが、製品という資産から売上原価へ移ります。つまり、仕掛品は未完成の段階、製品は完成済みの段階であり、販売によってはじめて原価が費用化される点を押さえることが重要です。

確かめ仕掛品300,000円のうち240,000円を製品へ振り替えるので、月末仕掛品は60,000円となる。製品240,000円のうち180,000円を売上原価へ振り替えるので、月末製品は60,000円となる。各仕訳の借方合計と貸方合計は一致している。

よくある間違い

工場で発生した費用をすべて直接費としてしまう。

広告宣伝費や販売員給料を製造原価に含めてしまう。

仕掛品と製品を同じ段階の資産と考えてしまう。

完成した時点と販売した時点の区別ができず、売上原価の計上時点を誤る。

この講の用語

直接材料費ちょくせつざいりょうひ
特定の製品にどれだけ使ったかを直接把握できる材料費。主要材料などが典型である。
間接材料費かんせつざいりょうひ
個別の製品に直接結び付けにくい材料費。補助材料などとして製造間接費に含めて扱う。
直接労務費ちょくせつろうむひ
製品の加工に直接従事した作業者の賃金や給料のうち、製品へ直接追跡できるもの。
製造間接費せいぞうかんせつひ
間接材料費、間接労務費、間接経費など、製品へ直接追跡しにくい製造関連原価の総称。
仕掛品しかかりひん
製造途中でまだ完成していない製品に集まっている原価を表す資産勘定。
製品せいひん
製造が完了した完成品の原価を表す資産勘定。販売されると売上原価へ振り替わる。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:23中心概念2級の工業簿記に入るための原価分類、三要素、原価計算手続、費目別計算を扱う。
  3. 1:16重要用語直接材料費、間接材料費、直接労務費、製造間接費、仕掛品、製品
  4. 2:07基本ルール何に使った費用かを最初に確認する。 次に、その費用が製品へ直接追えるかどうかで直接費と間接費を分ける。 製造に関する原価だけを仕掛品へ集計する。 販売費及び一般管理費は製品原価に入れない。
  5. 2:33判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:21確認ケース1ある工場で材料を100,000円現金で購入した。その後、このうち70,000円を製品Aの製造に使用し、20,000円を工場共通の補助材料として使用した。残りは月末に材料として残っている。必要な仕訳を示し、直接材料費と間接材料費の違いも確認しなさい。なお、数字は説明用の仮定である。
  7. 3:52確認ケース2当月、工場で賃金200,000円を現金で支払った。このうち150,000円は製品の加工作業に直接従事した工員の賃金、50,000円は工場監督者の賃金であった。必要な仕訳を示し、どの勘定に入れるべきか説明しなさい。なお、数字は説明用の仮定である。
  8. 5:14確認ケース3月末時点で、当月に仕掛品へ集められた製造原価は300,000円であった。このうち240,000円分が完成し、残りは未完成のまま月末に残った。さらに、完成した製品のうち180,000円分が当月中に販売された。完成時と販売時の仕訳を示し、仕掛品と製品の違いを説明しなさい。なお、数字は説明用の仮定である。
  9. 6:34よくある誤り工場で発生した費用をすべて直接費としてしまう。 広告宣伝費や販売員給料を製造原価に含めてしまう。 仕掛品と製品を同じ段階の資産と考えてしまう。 完成した時点と販売した時点の区別ができず、売上原価の計上時点を誤る。
  10. 8:21まとめ工業簿記では、材料費・労務費・経費を出発点として、直接費と間接費に分け、製造に関する原価を仕掛品へ集め、完成したら製品、販売したら売上原価へ流す。この全体の流れを理解することが、後の計算問題の土台になります。
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