株式会社会計会員向け7:55

株主資本と剰余金:株式発行・配当・準備金を整理する

株式発行による資本金と資本準備金の計上、繰越利益剰余金を財源とする配当、利益準備金の積立を、株主資本のどの箱が動くかという視点で整理します。第1問で問われやすい基本仕訳を、判定の順番とともに確認します。

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この講で分かるようになること

株式発行、配当、準備金の振替で、資本金・資本剰余金・利益剰余金のどこが動くかを判定できる。

  • 株式発行時の資本金と資本準備金を区別できる。
  • 資本準備金と利益準備金を区別できる。
  • 配当時の準備金積立額を計算または読み取りできる。
  • 繰越利益剰余金を財源とする処理を説明できる。

前提知識

  • 純資産の基本、損益振替の基礎。

要点

  1. 株式発行では、払込額を資本金と資本準備金に振り分ける。
  2. 配当は費用ではなく、純資産の処理として考える。
  3. 配当額と準備金積立額は別に判断する。
  4. 資本剰余金と利益剰余金は発生原因が異なる。

判断のルール

  • 株式発行か利益処分かを最初に判定する。
  • 財源が資本剰余金か利益剰余金かを確認する。
  • 配当額と準備金積立額を分けて把握する。
  • 振替先が資本金、資本準備金、利益準備金、未払配当金のどれかを確定する。

例題

例題1株式発行で資本金と資本準備金に振り分ける例

当社は普通株式1,000株を1株あたり500円で発行し、払込金は当座預金に入金された。会社は払込額のうち300,000円を資本金に計上し、残額は資本準備金とする。必要な仕訳を示しなさい。

答え(株式発行時)借方:当座預金 500,000/貸方:資本金 300,000、資本準備金 200,000

考え方事実として、払込総額は1,000株×500円=500,000円です。入金先は当座預金なので、借方は当座預金500,000円となります。次に、問題文で資本金に計上する額が300,000円と示されているため、貸方のうち300,000円は資本金です。残額は500,000円−300,000円=200,000円なので、株式発行に由来する資本剰余金として資本準備金に振り分けます。株式発行の論点では、払込額の全額を資本金にしない点が判断の中心です。

確かめ借方合計500,000円、貸方合計は資本金300,000円+資本準備金200,000円=500,000円で一致します。払込総額と資本金計上額の差額が資本準備金になっていることを確認します。

例題2繰越利益剰余金を財源に配当し、利益準備金を積み立てる例

株主総会で、繰越利益剰余金を財源として配当120,000円を行うことを決議した。あわせて利益準備金15,000円を積み立てる。必要な仕訳を示しなさい。

答え(配当決議時)借方:繰越利益剰余金 135,000/貸方:未払配当金 120,000、利益準備金 15,000

考え方まず、この取引は利益処分であり、費用の発生ではありません。財源は問題文にあるとおり繰越利益剰余金です。配当120,000円は株主への支払義務となるので未払配当金を計上します。一方、利益準備金15,000円は純資産内部の振替であり、貸方に利益準備金を立てます。したがって、繰越利益剰余金から減る総額は120,000円+15,000円=135,000円です。配当額と準備金積立額を分けて読み取ることが重要です。

確かめ借方合計135,000円、貸方合計は未払配当金120,000円+利益準備金15,000円=135,000円で一致します。配当を費用科目で処理していないかも確認します。

例題3株式発行後に配当と利益準備金積立を行う一連の例

当社は普通株式800株を1株あたり400円で発行し、払込金は当座預金に入金された。払込額のうち200,000円を資本金とし、残額は資本準備金とする。その後、繰越利益剰余金を財源として配当70,000円を決議し、同時に利益準備金10,000円を積み立てた。必要な仕訳を示しなさい。

答え(株式発行時)借方:当座預金 320,000/貸方:資本金 200,000、資本準備金 120,000 (配当決議時)借方:繰越利益剰余金 80,000/貸方:未払配当金 70,000、利益準備金 10,000

考え方最初の取引は株式発行です。払込総額は800株×400円=320,000円で、借方は当座預金320,000円となります。資本金にする額は200,000円と指定されているので、残額320,000円−200,000円=120,000円を資本準備金とします。次の取引は利益処分です。財源は繰越利益剰余金で、配当70,000円は未払配当金、積立10,000円は利益準備金へ振り替えます。したがって繰越利益剰余金の減少額は合計80,000円です。株式発行による資本剰余金の処理と、配当による利益剰余金の処理を混同しないことが判断のポイントです。

確かめ1本目の仕訳は借方320,000円、貸方200,000円+120,000円=320,000円で一致します。2本目の仕訳は借方80,000円、貸方70,000円+10,000円=80,000円で一致します。資本準備金と利益準備金の区別も確認します。

よくある間違い

株式発行の払込額をすべて資本金にしてしまう。

配当を費用として処理してしまう。

資本準備金と利益準備金を同じ性質のものとして扱ってしまう。

配当額と準備金積立額を同じ金額だと思い込む。

この講の用語

資本金しほんきん
株式発行などにより会社へ払い込まれた額のうち、資本金として計上する純資産の区分。
資本準備金しほんじゅんびきん
株式発行などに由来する資本剰余金の一つで、資本金に組み入れなかった部分を計上する区分。
利益準備金りえきじゅんびきん
利益剰余金の一つで、配当などに関連して繰越利益剰余金から振り替えられる区分。
繰越利益剰余金くりこしりえきじょうよきん
過去の利益の蓄積を表す利益剰余金の区分で、配当や準備金積立の財源となる。
剰余金の配当じょうよきんのはいとう
利益剰余金などを財源として株主へ分配する処理で、費用ではなく純資産の処理として行う。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:23中心概念2級の株式発行、資本金、剰余金、準備金、配当の基本処理を扱う。
  3. 1:02重要用語資本金、資本準備金、利益準備金、繰越利益剰余金、剰余金の配当
  4. 1:40基本ルール株式発行か利益処分かを最初に判定する。 財源が資本剰余金か利益剰余金かを確認する。 配当額と準備金積立額を分けて把握する。 振替先が資本金、資本準備金、利益準備金、未払配当金のどれかを確定する。
  5. 2:10判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 2:31確認ケース1当社は普通株式1,000株を1株あたり500円で発行し、払込金は当座預金に入金された。会社は払込額のうち300,000円を資本金に計上し、残額は資本準備金とする。必要な仕訳を示しなさい。
  7. 2:52確認ケース2株主総会で、繰越利益剰余金を財源として配当120,000円を行うことを決議した。あわせて利益準備金15,000円を積み立てる。必要な仕訳を示しなさい。
  8. 4:07確認ケース3当社は普通株式800株を1株あたり400円で発行し、払込金は当座預金に入金された。払込額のうち200,000円を資本金とし、残額は資本準備金とする。その後、繰越利益剰余金を財源として配当70,000円を決議し、同時に利益準備金10,000円を積み立てた。必要な仕訳を示しなさい。
  9. 5:22よくある誤り株式発行の払込額をすべて資本金にしてしまう。 配当を費用として処理してしまう。 資本準備金と利益準備金を同じ性質のものとして扱ってしまう。 配当額と準備金積立額を同じ金額だと思い込む。
  10. 7:12まとめこの論点では、株主資本のどの箱が動くかを見分けることが最重要です。株式発行では払込額を資本金と資本準備金へ振り分け、配当では繰越利益剰余金を減らして未払配当金を計上します。さらに、利益準備金の積立は純資産内部の振替として別に処理します。株式発行か利益処分か、財源は何か、配当額はいくらか、準備金積立額はいくらか、この順番で確認すれば正確に仕訳できます。
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