税金と税効果会計:一時差異を決算整理へつなげる
法人税等、消費税の税抜方式、そして貸倒引当金・減価償却・その他有価証券に関する一時差異を、決算整理の仕訳へ結び付けて整理します。会計上の利益と税務上の金額のズレを見つけ、繰延税金資産・繰延税金負債を判断する流れを確認します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
会計上の利益と課税所得の差を一時差異として捉え、繰延税金資産・負債を計算できる。
- 税金の種類と損益計算書上の表示を区別できる。
- 一時差異と将来解消しない差を混同しない。
- その他有価証券の税効果が純資産と結び付くことを説明できる。
前提知識
- 決算整理、貸倒引当金、減価償却、有価証券評価の基本。
ひとつ前の講:外貨建取引:取引日から決算日の換算まで
要点
- 税効果会計は将来解消する差を対象にする。
- 会計上の帳簿価額と税務上の金額の差を一時差異として把握する。
- 一時差異に税率を一度掛けて繰延税金資産または繰延税金負債を求める。
- その他有価証券に係る税効果は純資産と対応させる。
判断のルール
- 会計上の帳簿価額を確認する。
- 税務上の金額を求めて差額を一時差異として把握する。
- 一時差異に税率を掛けて繰延税金資産または繰延税金負債を計算する。
- 損益に関する税効果は法人税等調整額を用い、その他有価証券は純資産と対応させる。
例題
例題1貸倒引当金の損金算入限度超過額
決算日に、会計上の貸倒引当金残高は50,000円、税務上損金算入が認められる金額は30,000円であった。差額20,000円は将来解消するものとし、法定実効税率は30%とする。税効果会計の決算整理仕訳を示しなさい。
答え(決算整理)借方:繰延税金資産 6,000/貸方:法人税等調整額 6,000
考え方まず、会計上では50,000円の引当金を計上しているのに対し、税務上は30,000円までしか認められていないため、20,000円だけ会計上先に費用化されています。この20,000円は将来、実際の貸倒れなどにより税務上も認められる方向の差であり、一時差異です。将来の税負担を減らす効果があるので繰延税金資産を計上します。金額は20,000円×30%=6,000円です。相手科目は当期の税金費用を調整する法人税等調整額になります。
確かめ一時差異20,000円に税率30%を一度だけ掛けて6,000円。借方と貸方はいずれも6,000円で一致している。
例題2減価償却による一時差異
機械の期末帳簿価額は会計上240,000円、税務上の金額は200,000円であった。差額は減価償却費の計上時期の違いによるもので、将来解消する。法定実効税率は30%とする。税効果会計の決算整理仕訳を示しなさい。
答え(決算整理)借方:法人税等調整額 12,000/貸方:繰延税金負債 12,000
考え方会計上の帳簿価額240,000円に対して税務上の金額が200,000円なので、40,000円の差があります。税務上の金額のほうが小さいということは、税務では会計より先に費用化が進んでいる状態です。そのため、将来は会計より税務の費用が小さくなり、課税所得が増える方向に解消します。したがって、将来の税負担が増える効果をもつ一時差異として繰延税金負債を認識します。金額は40,000円×30%=12,000円で、相手科目は法人税等調整額です。
確かめ差額は240,000円-200,000円=40,000円。税率30%で12,000円。借方12,000円、貸方12,000円で一致している。
例題3その他有価証券の評価差額と税効果
決算日に保有するその他有価証券について、帳簿価額100,000円を時価130,000円に評価替えした。評価差額30,000円は将来解消するものとし、法定実効税率は30%とする。税効果を含めた決算整理仕訳を示しなさい。
答え(時価評価)借方:その他有価証券 30,000/貸方:その他有価証券評価差額金 30,000 (税効果認識)借方:その他有価証券評価差額金 9,000/貸方:繰延税金負債 9,000
考え方まず時価が帳簿価額を30,000円上回っているため、その他有価証券を増額し、評価差額金を純資産に計上します。この30,000円の評価差額は、将来売却などの場面で税金の影響が出るため一時差異として扱います。評価益に対応する将来の税負担増加を見込むので、繰延税金負債を計上します。金額は30,000円×30%=9,000円です。重要なのは、この税効果の相手科目が損益ではなく、同じ純資産のその他有価証券評価差額金になる点です。
確かめ時価評価の仕訳は30,000円で一致。税効果は30,000円×30%=9,000円で、借方9,000円と貸方9,000円が一致している。純資産対応になっていることも確認する。
よくある間違い
税効果会計を実際の納付税額の計算だと思い込む。
一時差異に税率を二度掛けてしまう。
その他有価証券の税効果を損益の法人税等調整額で処理してしまう。
会計上の差額があるだけで、将来解消するかどうかを確かめずに税効果の対象にしてしまう。
この講の用語
- 法人税等ほうじんぜいとう
- 法人税、住民税、事業税をまとめた呼び方で、当期の利益に対応する税金として扱う。
- 消費税(税抜方式)しょうひぜい ぜいぬきほうしき
- 売上や仕入を本体価額と消費税額に分けて記録する方式で、仮受消費税や仮払消費税を用いる。
- 一時差異いちじさい
- 会計上の帳簿価額と税務上の金額との差額のうち、将来解消すると見込まれるもの。
- 繰延税金資産くりのべぜいきんしさん
- 将来の税負担を減らす効果を持つ一時差異に対して計上する資産。
- 繰延税金負債くりのべぜいきんふさい
- 将来の税負担を増やす効果を持つ一時差異に対して計上する負債。
- 法人税等調整額ほうじんぜいとうちょうせいがく
- 税効果会計によって当期の税金費用を調整するために用いる勘定科目。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:24中心概念2級に限定された三つの一時差異と、消費税の税抜方式を扱う。
- 1:16重要用語法人税等、消費税(税抜方式)、一時差異、繰延税金資産、繰延税金負債、法人税等調整額
- 2:02基本ルール会計上の帳簿価額を確認する。 税務上の金額を求めて差額を一時差異として把握する。 一時差異に税率を掛けて繰延税金資産または繰延税金負債を計算する。 損益に関する税効果は法人税等調整額を用い、その他有価証券は純資産と対応させる。
- 2:36判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:15確認ケース1決算日に、会計上の貸倒引当金残高は50,000円、税務上損金算入が認められる金額は30,000円であった。差額20,000円は将来解消するものとし、法定実効税率は30%とする。税効果会計の決算整理仕訳を示しなさい。
- 3:49確認ケース2機械の期末帳簿価額は会計上240,000円、税務上の金額は200,000円であった。差額は減価償却費の計上時期の違いによるもので、将来解消する。法定実効税率は30%とする。税効果会計の決算整理仕訳を示しなさい。
- 5:18確認ケース3決算日に保有するその他有価証券について、帳簿価額100,000円を時価130,000円に評価替えした。評価差額30,000円は将来解消するものとし、法定実効税率は30%とする。税効果を含めた決算整理仕訳を示しなさい。
- 6:43よくある誤り税効果会計を実際の納付税額の計算だと思い込む。 一時差異に税率を二度掛けてしまう。 その他有価証券の税効果を損益の法人税等調整額で処理してしまう。 会計上の差額があるだけで、将来解消するかどうかを確かめずに税効果の対象にしてしまう。
- 8:24まとめ税金分野では、法人税等、消費税の税抜方式、税効果会計を分けて考えることが重要です。税効果会計は、会計上の帳簿価額と税務上の金額の差のうち、将来解消する一時差異に税率を掛けて、繰延税金資産または繰延税金負債を求めます。貸倒引当金と減価償却は損益と結び付け、その他有価証券は純資産と結び付ける点を確実に区別しましょう。
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