無形固定資産とのれん:取得から償却まで
のれん、自社利用ソフトウェア、その他の無形固定資産について、取得原価、償却、帳簿価額、固定資産台帳の見方を整理します。形がない資産をどのように会計に載せるかを、有形固定資産との共通点と違いから学びます。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
無形固定資産の取得原価と償却を、有形固定資産との共通点・違いから説明できる。
- 自社利用ソフトウェアを2級の対象として判定できる。
- のれんを償却する理由を説明できる。
- 無形固定資産の期末帳簿価額を計算できる。
前提知識
- 有形固定資産の取得原価と間接法による減価償却。
ひとつ前の講:有形固定資産:取得・建設仮勘定・減価償却をつなげる
要点
- 形がなくても将来の便益が見込まれるものは資産として計上する。
- 自社利用ソフトウェアは無形固定資産として扱う。
- のれんは企業買収などで生じ、一定期間で償却する。
- 償却は取得原価を使用期間に配分する考え方である。
- 期末帳簿価額は取得原価から償却累計額を差し引いて求める。
判断のルール
- 何のために取得したかを最初に確認する。
- 資産性があるかを判断してから取得原価を決める。
- 取得原価は耐用期間ではなく、与えられた償却期間にわたって配分する。
- 当期償却額を計算したら、期末帳簿価額まで必ずつなげる。
例題
例題1自社利用ソフトウェアの取得と決算整理
4月1日に自社の会計処理に使うソフトウェアを現金720,000円で取得し、使用開始した。償却期間は3年、月割で償却する。決算日は翌年3月31日である。取得時と決算整理の仕訳を示し、期末帳簿価額を求めなさい。
答え(取得時)借方:ソフトウェア 720,000/貸方:現金 720,000 (決算整理)借方:ソフトウェア償却 240,000/貸方:ソフトウェア 240,000
考え方まず、用途が自社の会計処理なので、自社利用ソフトウェアに当たり、無形固定資産として処理します。取得原価は支払額720,000円です。償却期間は3年なので、年額償却は720,000円÷3年=240,000円となります。4月1日取得で決算日が翌年3月31日なので、当期はちょうど12か月使用しており、月割しても全額240,000円を償却します。したがって、取得時はソフトウェア計上、決算時は償却費相当額としてソフトウェア償却を計上し、資産簿価を減額します。
確かめ決算整理後の帳簿価額は720,000円-240,000円=480,000円。仕訳の借方合計と貸方合計は各行で一致している。
例題2期中取得した自社利用ソフトウェアの月割計算
10月1日に販売管理用として自社で使うソフトウェアを掛けで600,000円取得し、同日から使用した。償却期間は5年、月割で償却する。決算日は3月31日である。取得時と決算整理の仕訳を示し、当期償却額と期末帳簿価額を求めなさい。
答え(取得時)借方:ソフトウェア 600,000/貸方:未払金 600,000 (決算整理)借方:ソフトウェア償却 60,000/貸方:ソフトウェア 60,000
考え方問題文に販売管理用として自社で使うとあるため、自社利用ソフトウェアとして無形固定資産に計上します。取得原価は600,000円です。償却期間5年より、年額償却は600,000円÷5年=120,000円です。10月1日取得で決算日が3月31日なので、当期の使用月数は6か月です。よって当期償却額は120,000円×6か月÷12か月=60,000円となります。取得時は未払金で計上し、決算整理で当期分のみ償却します。
確かめ当期償却額は60,000円、期末帳簿価額は600,000円-60,000円=540,000円。取得時・決算整理時ともに仕訳の借貸は一致している。
例題3のれんの計上と償却
7月1日にA事業を1,500,000円で買収し、代金は普通預金から支払った。受け入れた資産総額は1,300,000円、負債総額は200,000円であった。差額はのれんとして処理する。のれんの償却期間は5年、月割で償却する。決算日は3月31日である。買収時と決算整理の仕訳を示し、当期末ののれんの帳簿価額を求めなさい。
答え(買収時)借方:諸資産 1,300,000、のれん 400,000/貸方:諸負債 200,000、普通預金 1,500,000 (決算整理)借方:のれん償却 60,000/貸方:のれん 60,000
考え方まず、買収で受け入れた純資産額は1,300,000円-200,000円=1,100,000円です。支払対価は1,500,000円なので、これを上回る差額400,000円がのれんになります。したがって、買収時は受け入れた資産と負債を計上し、差額をのれんとして資産計上します。次に償却です。のれん400,000円を5年で償却するので年額は80,000円です。7月1日から3月31日までの当期使用月数は9か月なので、当期償却額は80,000円×9か月÷12か月=60,000円です。決算整理でのれん償却を計上します。
確かめ買収時の借方合計は1,700,000円、貸方合計も1,700,000円で一致する。当期末ののれん帳簿価額は400,000円-60,000円=340,000円。
よくある間違い
ソフトウェア関連の支出を目的の確認なしにすべて資産計上してしまう。
のれんを企業の利益や配当可能額のように考えてしまう。
無形固定資産の償却を、有形固定資産の減価償却と全く別の原理だと思ってしまう。
当期償却額だけ計算して、期末帳簿価額まで確認しない。
固定資産台帳の取得原価、償却額、帳簿価額のつながりを見落とす。
この講の用語
- 無形固定資産むけいこていしさん
- 形はないが、将来の事業活動に役立つ便益を見込んで長期保有する固定資産。
- 自社利用ソフトウェアじしゃりようそふとうぇあ
- 会社が自社の業務のために使用するソフトウェアで、2級では無形固定資産として扱う。
- のれんのれん
- 企業買収などで支払対価が取得した純資産額を上回ったときに生じる無形固定資産。
- 償却しょうきゃく
- 取得原価を使用期間にわたって規則的に各期の費用へ配分する処理。
- 帳簿価額ちょうぼかがく
- 取得原価からこれまでの償却累計額を差し引いた、決算日時点の資産の帳簿上の金額。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:20中心概念2級で扱う無形固定資産、のれん、自社利用ソフトウェア、償却を扱う。
- 1:08重要用語無形固定資産、自社利用ソフトウェア、のれん、償却、帳簿価額
- 1:49基本ルール何のために取得したかを最初に確認する。 資産性があるかを判断してから取得原価を決める。 取得原価は耐用期間ではなく、与えられた償却期間にわたって配分する。 当期償却額を計算したら、期末帳簿価額まで必ずつなげる。
- 2:13判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 2:39確認ケース14月1日に自社の会計処理に使うソフトウェアを現金720,000円で取得し、使用開始した。償却期間は3年、月割で償却する。決算日は翌年3月31日である。取得時と決算整理の仕訳を示し、期末帳簿価額を求めなさい。
- 3:02確認ケース210月1日に販売管理用として自社で使うソフトウェアを掛けで600,000円取得し、同日から使用した。償却期間は5年、月割で償却する。決算日は3月31日である。取得時と決算整理の仕訳を示し、当期償却額と期末帳簿価額を求めなさい。
- 4:32確認ケース37月1日にA事業を1,500,000円で買収し、代金は普通預金から支払った。受け入れた資産総額は1,300,000円、負債総額は200,000円であった。差額はのれんとして処理する。のれんの償却期間は5年、月割で償却する。決算日は3月31日である。買収時と決算整理の仕訳を示し、当期末ののれんの帳簿価額を求めなさい。
- 5:53よくある誤りソフトウェア関連の支出を目的の確認なしにすべて資産計上してしまう。 のれんを企業の利益や配当可能額のように考えてしまう。 無形固定資産の償却を、有形固定資産の減価償却と全く別の原理だと思ってしまう。 当期償却額だけ計算して、期末帳簿価額まで確認しない。 固定資産台帳の取得原価、償却額、帳簿価額のつながりを見落とす。
- 7:36まとめ無形固定資産は形がなくても将来の便益があれば資産として計上します。2級では特に自社利用ソフトウェアとのれんが重要です。学習の手順は、取得目的の確認、資産性の判断、取得原価の把握、償却期間に基づく費用配分、期末帳簿価額の計算です。有形固定資産との共通点を意識しながら、固定資産台帳と仕訳を結び付けて整理しましょう。
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