固定資産会計会員向け8:50

有形固定資産:取得・建設仮勘定・減価償却をつなげる

有形固定資産について、取得原価の判定、建設仮勘定の集計、使用開始時の振替、直接控除方式による補助金処理、間接法による減価償却、固定資産台帳の見方を一連の流れで整理します。特に、支払時点ではなく使用開始時点で処理を切り替える考え方を重点的に確認します。

有形固定資産:取得・建設仮勘定・減価償却をつなげるの表紙動画の視聴は会員向けです

この講で分かるようになること

支出が取得原価になるか費用になるかを判定し、使用開始前後で建設仮勘定と減価償却を正しく処理できる。

  • 建設仮勘定から建物などへの振替時点を説明できる。
  • 直接控除方式による補助金控除後の取得原価を計算できる。
  • 固定資産台帳と総勘定元帳の役割の違いを説明できる。

前提知識

  • 資産・費用の区別、定額法による減価償却の基礎。

要点

  1. 取得原価は、資産を使用可能な状態にするために必要な支出で判断する。
  2. 使用開始前の建設支出は建設仮勘定で集計し、使用開始時に本勘定へ振り替える。
  3. 補助金や工事負担金は直接控除方式により取得原価から差し引く。
  4. 減価償却は間接法で行い、減価償却累計額で管理する。

判断のルール

  • 支出の目的を確認し、取得原価か当期費用かを先に判定する。
  • 使用開始の前後で、建設仮勘定のままか本勘定へ振り替えるかを決める。
  • 補助金は対象資産の取得原価から直接控除して計上額を確定する。
  • 期末には控除後の取得原価を基礎として、間接法で減価償却を行う。

例題

例題1倉庫建設の着手から使用開始まで

当社は営業用倉庫を建設している。4月10日に工事着手金300,000円を現金で支払い、6月20日に中間金500,000円を当座預金から支払った。9月1日に倉庫が完成して使用を開始し、同日に残代金400,000円を未払いとした。使用開始時の仕訳を含めて必要な処理を示しなさい。

答え(4月10日 着手金支払)借方:建設仮勘定 300,000/貸方:現金 300,000 (6月20日 中間金支払)借方:建設仮勘定 500,000/貸方:当座預金 500,000 (9月1日 完成・使用開始時の残代金計上)借方:建設仮勘定 400,000/貸方:未払金 400,000 (9月1日 建設仮勘定から建物へ振替)借方:建物 1,200,000/貸方:建設仮勘定 1,200,000

考え方見るべき事実は、4月10日と6月20日は工事代金の支払であるが、まだ完成しておらず使用開始前である点です。この段階では建物ではなく建設仮勘定で集計します。9月1日は完成し、実際に使用を開始しているため、この日が本勘定への振替時点です。残代金400,000円は完成した時点の工事原価に含まれるので、まず建設仮勘定に加え、その合計1,200,000円を建物へ振り替えます。支払済みか未払いかではなく、使用開始の有無で勘定科目を切り替えるのが判断の中心です。

確かめ建設仮勘定の集計額は300,000+500,000+400,000=1,200,000円です。振替仕訳後、建設仮勘定は1,200,000円減少して残高0円、建物は1,200,000円となります。各仕訳とも借方合計と貸方合計が一致しています。

例題2補助金を受けた建物の取得原価

当社は営業用の建物を建設し、工事が完了して使用を開始した。工事代金は総額1,500,000円で、全額を普通預金から支払った。これに対して国庫補助金300,000円を普通預金で受け取り、直接控除方式で処理する。必要な仕訳を示し、建物の取得原価を求めなさい。

答え(工事代金支払)借方:建物 1,500,000/貸方:普通預金 1,500,000 (補助金受領と直接控除)借方:普通預金 300,000/貸方:建物 300,000

考え方判断のポイントは、補助金を収益として処理するのではなく、直接控除方式により建物の取得原価から差し引くことです。建物は使用開始済みなので、建設仮勘定ではなく建物で計上します。まず総額1,500,000円で建物を計上し、その後、補助金300,000円の受領に合わせて建物勘定を減額します。したがって、最終的な建物の取得原価は1,500,000円から300,000円を差し引いた1,200,000円です。補助金の受領事実と、直接控除方式という指示が処理決定の根拠になります。

確かめ建物の最終残高は1,500,000-300,000=1,200,000円です。普通預金は工事代金支払で1,500,000円減少し、補助金受領で300,000円増加します。各仕訳の借方合計と貸方合計はそれぞれ一致しています。

例題3使用開始後の決算償却

当社は9月1日に営業用倉庫を使用開始した。取得原価は1,200,000円、残存価額は0円、耐用年数は10年、償却方法は定額法、決算日は3月31日である。間接法により当期の減価償却の仕訳を示しなさい。

答え(3月31日 当期の減価償却)借方:減価償却費 70,000/貸方:減価償却累計額 70,000

考え方まず年額を求めます。定額法なので、1,200,000円÷10年=120,000円が1年分の償却額です。次に使用月数を確認します。9月1日使用開始で3月31日決算なので、9月から3月までの7か月分を当期に計上します。したがって、120,000円×7か月÷12か月=70,000円です。使用開始前の期間は償却しないこと、そして間接法なので相手科目は建物ではなく減価償却累計額になることが判断の要点です。

確かめ年額120,000円、月額10,000円、当期7か月で70,000円となります。取得原価1,200,000円を直接減らさず、累計額で管理しているため、建物は1,200,000円のまま、帳簿価額は1,200,000円-70,000円=1,130,000円と確認できます。仕訳の借方合計と貸方合計は70,000円で一致しています。

よくある間違い

工事代金の一部を支払っただけで、完成前に建物へ振り替えてしまう。

補助金を受け取ったとき、取得原価を下げずに収益だけで処理してしまう。

使用開始前の資産に対して減価償却を始めてしまう。

減価償却累計額を費用科目のように考え、減価償却費との役割を混同してしまう。

この講の用語

建設仮勘定けんせつかりかんじょう
建物などを建設中の段階で、完成前の支出を一時的に集計する勘定科目。使用開始時に本勘定へ振り替える。
取得原価しゅとくげんか
固定資産を取得し、営業で使える状態にするまでに必要な支出を含めた計上額。
直接控除方式ちょくせつこうじょほうしき
補助金や工事負担金を受けたときに、対象となる固定資産の取得原価から直接差し引いて処理する方法。
減価償却累計額げんかしょうきゃくるいけいがく
間接法で、これまでに計上した減価償却費の累計を示す評価勘定。
固定資産台帳こていしさんだいちょう
固定資産ごとに、取得日、取得原価、償却方法、累計額などの明細を管理する帳簿。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:22中心概念2027年度の2級範囲である取得、建設、使用開始、間接法による償却を扱う。
  3. 1:05重要用語建設仮勘定、取得原価、直接控除方式、減価償却累計額、固定資産台帳
  4. 1:53基本ルール支出の目的を確認し、取得原価か当期費用かを先に判定する。 使用開始の前後で、建設仮勘定のままか本勘定へ振り替えるかを決める。 補助金は対象資産の取得原価から直接控除して計上額を確定する。 期末には控除後の取得原価を基礎として、間接法で減価償却を行う。
  5. 2:13判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 2:44確認ケース1当社は営業用倉庫を建設している。4月10日に工事着手金300,000円を現金で支払い、6月20日に中間金500,000円を当座預金から支払った。9月1日に倉庫が完成して使用を開始し、同日に残代金400,000円を未払いとした。使用開始時の仕訳を含めて必要な処理を示しなさい。
  7. 3:19確認ケース2当社は営業用の建物を建設し、工事が完了して使用を開始した。工事代金は総額1,500,000円で、全額を普通預金から支払った。これに対して国庫補助金300,000円を普通預金で受け取り、直接控除方式で処理する。必要な仕訳を示し、建物の取得原価を求めなさい。
  8. 4:44確認ケース3当社は9月1日に営業用倉庫を使用開始した。取得原価は1,200,000円、残存価額は0円、耐用年数は10年、償却方法は定額法、決算日は3月31日である。間接法により当期の減価償却の仕訳を示しなさい。
  9. 6:04よくある誤り工事代金の一部を支払っただけで、完成前に建物へ振り替えてしまう。 補助金を受け取ったとき、取得原価を下げずに収益だけで処理してしまう。 使用開始前の資産に対して減価償却を始めてしまう。 減価償却累計額を費用科目のように考え、減価償却費との役割を混同してしまう。
  10. 7:55まとめ有形固定資産は、まず取得原価に含める支出か費用かを判定し、建設中は建設仮勘定で集計します。完成して使用を開始した時点で建物などへ振り替え、補助金は直接控除方式で取得原価から差し引きます。その後、期末には間接法で減価償却を行い、固定資産台帳で資産ごとの明細を管理します。支払時点ではなく使用開始時点を軸に整理することが重要です。
日商簿記2級の学習を続ける

講義・過去問・暗記カード・模試まで、同じ論点でつながっています。

登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。

「固定資産会計」の他の講

日商簿記2級の講義一覧をすべて見る