有価証券:保有目的ごとの処理と決算評価
売買目的有価証券、満期保有目的債券、その他有価証券について、取得時の端数利息、期末評価、売却、税効果会計までを保有目的ごとに整理します。時価評価が損益に入るのか、純資産に入るのか、償却原価法で処理するのかを見分けられるようにします。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
保有目的を先に判定し、同じ債券でも期末評価と損益・純資産への影響を区別できる。
- 端数利息を債券本体の取得原価と区別できる。
- 満期保有目的債券の償却原価を計算できる。
- その他有価証券の評価差額と税効果をつなげて仕訳できる。
前提知識
- 借方・貸方、利息の月割計算、税効果会計の入口。
要点
- 保有目的の判定が評価方法と表示先を決める。
- 端数利息は有価証券の取得原価に含めず、利息部分として分ける。
- 売買目的有価証券の期末評価差額は当期損益で処理する。
- 満期保有目的債券は償却原価法で帳簿価額を調整する。
- その他有価証券の評価差額は純資産と税効果を同時に考える。
判断のルール
- 取得日、利払日、売却日、決算日の順に時系列で整理する。
- 評価差額の行き先が損益か純資産かを先に決める。
- 端数利息は額面金額、年利率、経過月数から月割で計算する。
- 満期保有目的債券は時価ではなく償却原価法で帳簿価額を求める。
例題
例題1売買目的有価証券の取得と期末評価
当社は6月1日に、額面1,000,000円の国債を売買目的で990,000円で購入し、代金は現金で支払った。利払日は毎年3月末日と9月末日、表面利率は年1.2%である。取得価額とは別に、前回利払日から取得日までの端数利息2,000円を支払った。12月31日の時価は995,000円であった。必要な仕訳を示しなさい。
答え(取得時)借方:売買目的有価証券 990,000円、有価証券利息 2,000円/貸方:現金 992,000円 (決算時の評価替え)借方:売買目的有価証券 5,000円/貸方:有価証券評価益 5,000円
考え方まず保有目的が売買目的なので、期末は時価評価し、その差額は損益で処理すると判断する。次に取得時は、支払総額のうち990,000円が債券本体、2,000円が端数利息であるため分けて仕訳する。端数利息は取得原価に含めない。決算時は帳簿価額990,000円と時価995,000円を比較し、5,000円の評価益が生じるので、有価証券を増額し評価益を計上する。
確かめ取得時は借方990,000円+2,000円=992,000円、貸方現金992,000円で一致する。決算時は時価995,000円−帳簿価額990,000円=5,000円で、評価後の帳簿価額が995,000円となり時価と一致する。
例題2満期保有目的債券の償却原価法
当社は4月1日に、額面1,000,000円、満期まで5年の国債を満期保有目的で970,000円で取得し、代金は当座預金から支払った。差額30,000円は定額法により5年で償却する。決算日は翌年3月31日である。必要な仕訳を示しなさい。
答え(取得時)借方:満期保有目的債券 970,000円/貸方:当座預金 970,000円 (決算時の償却)借方:満期保有目的債券 6,000円/貸方:有価証券利息 6,000円
考え方保有目的は満期保有目的であり、短期的な価格変動で評価損益を計上するのではなく、償却原価法で帳簿価額を調整する。取得価額970,000円は額面1,000,000円より30,000円低いので割引取得である。定額法により5年で償却するから、1年あたりの償却額は30,000円÷5年=6,000円となる。取得日が4月1日、決算日が翌年3月31日なので1年分を計上し、帳簿価額を増やす。
確かめ償却額は30,000円÷5=6,000円。決算後の帳簿価額は970,000円+6,000円=976,000円となる。借方と貸方はいずれも6,000円で一致している。
例題3その他有価証券の期末評価と税効果
当社は10月1日に、国債をその他有価証券として480,000円で購入し、代金は現金で支払った。12月31日の時価は520,000円であった。税率は30%とする。決算時に必要な仕訳を示しなさい。
答え(取得時)借方:その他有価証券 480,000円/貸方:現金 480,000円 (決算時の評価替え)借方:その他有価証券 40,000円/貸方:繰延税金負債 12,000円、その他有価証券評価差額金 28,000円
考え方保有目的はその他有価証券なので、決算では時価評価するが、その差額は損益ではなく純資産で処理する。また、評価差額には将来の税金の影響があるため税効果会計を合わせて行う。帳簿価額480,000円と時価520,000円の差額は40,000円の評価益相当である。税率30%なので税金相当額は40,000円×30%=12,000円となり、これは繰延税金負債で処理する。残額28,000円をその他有価証券評価差額金として純資産に計上する。
確かめ評価差額は520,000円−480,000円=40,000円。税効果は40,000円×30%=12,000円、純資産計上額は40,000円−12,000円=28,000円。決算仕訳は借方40,000円、貸方12,000円+28,000円=40,000円で一致する。
よくある間違い
すべての有価証券を期末時価評価し、差額を損益にしてしまう。
端数利息を有価証券の取得原価に含めてしまう。
満期保有目的債券でも期末時価との差額を処理してしまう。
その他有価証券評価差額金の税効果を損益科目で処理してしまう。
売却損益の計算で帳簿価額ではなく額面金額と比較してしまう。
この講の用語
- 売買目的有価証券ばいばいもくてきゆうかしょうけん
- 短期的な価格変動による利益獲得を目的として保有する有価証券。決算時は時価で評価し、評価差額は損益に計上する。
- 満期保有目的債券まんきほゆうもくてきさいけん
- 満期まで保有する意思をもって保有する債券。決算では時価評価せず、必要に応じて償却原価法を用いて帳簿価額を調整する。
- その他有価証券そのたゆうかしょうけん
- 売買目的有価証券と満期保有目的債券のいずれにも当てはまらない有価証券。決算時は時価評価し、評価差額は原則として純資産に計上する。
- 端数利息はすうりそく
- 利払日の途中で債券を取得したときに、売買代金に含まれる経過利息のこと。有価証券本体の取得原価とは区別して処理する。
- 償却原価法しょうきゃくげんかほう
- 債券の取得価額と額面金額との差額を、利息の調整として保有期間に配分し、帳簿価額を満期額面に近づける方法。
- その他有価証券評価差額金そのたゆうかしょうけんひょうかさがくきん
- その他有価証券の期末時価評価によって生じた差額を、税効果調整後に純資産へ計上する科目。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:20中心概念2級で扱う三つの保有目的と、期末評価・利息・売却の基本処理を扱う。
- 1:04重要用語売買目的有価証券、満期保有目的債券、その他有価証券、端数利息、償却原価法、その他有価証券評価差額金
- 1:54基本ルール取得日、利払日、売却日、決算日の順に時系列で整理する。 評価差額の行き先が損益か純資産かを先に決める。 端数利息は額面金額、年利率、経過月数から月割で計算する。 満期保有目的債券は時価ではなく償却原価法で帳簿価額を求める。
- 2:33判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:11確認ケース1当社は6月1日に、額面1,000,000円の国債を売買目的で990,000円で購入し、代金は現金で支払った。利払日は毎年3月末日と9月末日、表面利率は年1.2%である。取得価額とは別に、前回利払日から取得日までの端数利息2,000円を支払った。12月31日の時価は995,000円であった。必要な仕訳を示しなさい。
- 3:49確認ケース2当社は4月1日に、額面1,000,000円、満期まで5年の国債を満期保有目的で970,000円で取得し、代金は当座預金から支払った。差額30,000円は定額法により5年で償却する。決算日は翌年3月31日である。必要な仕訳を示しなさい。
- 5:26確認ケース3当社は10月1日に、国債をその他有価証券として480,000円で購入し、代金は現金で支払った。12月31日の時価は520,000円であった。税率は30%とする。決算時に必要な仕訳を示しなさい。
- 6:46よくある誤りすべての有価証券を期末時価評価し、差額を損益にしてしまう。 端数利息を有価証券の取得原価に含めてしまう。 満期保有目的債券でも期末時価との差額を処理してしまう。 その他有価証券評価差額金の税効果を損益科目で処理してしまう。 売却損益の計算で帳簿価額ではなく額面金額と比較してしまう。
- 8:45まとめ有価証券は、まず保有目的を判定することが最重要です。売買目的有価証券は時価評価差額を損益へ、満期保有目的債券は償却原価法で帳簿価額を調整し、その他有価証券は評価差額を純資産へ計上します。債券取得時の端数利息は取得原価と分け、決算では税効果の有無まで確認します。時系列で事実を整理し、どの差額がどこへ行くかを先に決めることが得点の鍵です。
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