商品売買・収益認識会員向け10:04

商品売買と収益認識:いつ売上を計上し、何を資産・負債にするか

商品売買における売上計上の時点、契約資産・契約負債の考え方、棚卸減耗と商品評価損の違い、商品有高帳から期末商品と売上原価をつかむ見方を整理します。複数の履行義務がある契約でも、引渡しと請求権の状態を分けて判断できるようにします。

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この講で分かるようになること

商品を売った事実と収益を認識する条件を分け、契約資産・契約負債を含む仕訳を組み立てられる。

  • 棚卸減耗と商品評価損を別の理由として説明できる。
  • 履行義務ごとに売上を認識する理由を説明できる。
  • 期末商品と売上原価の関係を復元できる。

前提知識

  • 簿記3級の三分法、期首・期末商品の基本。

要点

  1. 売上は代金回収時ではなく、履行義務を充足した時点で認識する。
  2. 契約資産は履行済みだが請求権が無条件ではないときに生じる。
  3. 契約負債は代金先受けでも未履行の部分について生じる。
  4. 棚卸減耗は数量差異、商品評価損は価値低下として区別する。
  5. 商品有高帳では数量と単価を対応させて期末商品を把握する。

判断のルール

  • 契約、履行義務、引渡し、請求権、入金の順で事実を確認する。
  • 複数の商品やサービスは、履行義務ごとに売上計上時点を判定する。
  • 履行済みでも請求に条件が残るなら、売掛金ではなく契約資産を検討する。
  • 商品は数量の減少と価値の低下を分けて判定する。

例題

例題1別日に引き渡す二商品の契約で、先に引き渡した分を契約資産とする例

4月1日、A商品とB商品を合わせて330,000円で販売する契約を結んだ。独立販売価格はA商品120,000円、B商品210,000円で、対価はB商品の引渡し後にまとめて請求できる。4月10日にA商品を引き渡し、4月25日にB商品を引き渡した。4月25日に全額を掛けとした。各日の仕訳を示しなさい。なお、金額配分は独立販売価格の比で行う。

答え(4月10日 A商品の引渡し)借方:契約資産 120,000/貸方:売上 120,000 (4月25日 B商品の引渡し)借方:売掛金 330,000/貸方:売上 210,000、契約資産 120,000

考え方まず契約全体の対価330,000円を、独立販売価格の比120,000:210,000で配分すると、A商品120,000円、B商品210,000円となる。4月10日はA商品だけを引き渡しており、その履行義務は充足しているので売上を認識する。ただし請求はB商品の引渡し後でなければできないため、この時点では売掛金ではなく契約資産とする。4月25日はB商品を引き渡したことで残りの履行義務も充足し、同時に請求権が無条件になる。したがって契約全体330,000円を売掛金に振り替え、当日分の売上210,000円を計上し、既に計上済みの契約資産120,000円を消す。

確かめ対価配分の合計は120,000円+210,000円=330,000円で契約額と一致する。4月10日の仕訳は借貸一致120,000円。4月25日の仕訳は借方330,000円、貸方210,000円+120,000円=330,000円で一致する。最終的な売上合計は330,000円となる。

例題2先に代金を受け取り、後で商品を引き渡す契約負債の例

6月1日、C商品とD商品を合計220,000円で販売する契約を結び、顧客から全額を現金で受け取った。独立販売価格はC商品80,000円、D商品140,000円である。6月5日にC商品を引き渡し、6月20日にD商品を引き渡した。各日の仕訳を示しなさい。

答え(6月1日 代金の受取り)借方:現金 220,000/貸方:契約負債 220,000 (6月5日 C商品の引渡し)借方:契約負債 80,000/貸方:売上 80,000 (6月20日 D商品の引渡し)借方:契約負債 140,000/貸方:売上 140,000

考え方代金は6月1日に受け取っているが、この時点ではまだどちらの商品も引き渡していないため、売上ではなく契約負債とする。次に、契約額220,000円は独立販売価格の比80,000:140,000で配分され、そのままC商品80,000円、D商品140,000円となる。6月5日にC商品の履行義務が充足した時点で、その分だけ契約負債を減らして売上を認識する。6月20日も同様に、D商品の引渡しによって残りの契約負債を売上へ振り替える。入金日ではなく引渡し日で売上を計上するのが判断の中心である。

確かめ契約負債の期首計上220,000円は、6月5日に80,000円、6月20日に140,000円だけ減少し、合計220,000円で消える。各仕訳はすべて借貸一致しており、最終的な売上合計も220,000円で契約額と一致する。

例題3帳簿数量と実地棚卸数量の差、さらに価値低下もある例

決算日において、商品勘定の帳簿残高は160,000円であり、これは帳簿数量80個、1個当たり原価2,000円に基づく。実地棚卸の結果、数量は76個であった。さらに、この76個のうち販売可能な正味売却価額は1個当たり1,850円と見積もられた。棚卸減耗と商品評価損を区別して決算整理仕訳を示しなさい。

答え(決算整理 棚卸減耗の計上)借方:棚卸減耗損 8,000/貸方:商品 8,000 (決算整理 商品評価損の計上)借方:商品評価損 11,400/貸方:商品 11,400

考え方まず帳簿数量80個に対し実地棚卸数量は76個なので、4個不足している。これは数量差異であり、棚卸減耗として処理する。金額は4個×2,000円=8,000円である。次に、実際に残っている76個について価値低下を判定する。原価2,000円に対し正味売却価額は1,850円なので、1個当たり150円の下落がある。したがって商品評価損は76個×150円=11,400円となる。ここで重要なのは、減った4個についてさらに評価損を計算しないことと、数量差異と価値低下を別の理由で区別することである。

確かめ棚卸減耗後の商品帳簿額は160,000円-8,000円=152,000円で、76個×2,000円と一致する。さらに商品評価損11,400円を差し引くと140,600円となり、これは76個×1,850円=140,600円と一致する。各仕訳も借貸同額で整合している。

よくある間違い

入金予定日や請求日を見て売上を計上してしまう。

履行済みで請求に条件が残るものを売掛金として処理してしまう。

契約負債を前受金の感覚だけで考え、未履行部分との対応を見落とす。

棚卸減耗と商品評価損を同じ理由の損失としてまとめてしまう。

商品有高帳で数量だけを追い、単価や金額との対応を確認しない。

この講の用語

履行義務りこうぎむ
顧客との契約で約束した財やサービスを移転する義務。これを充足した時点で、その部分の収益認識を検討する。
契約資産けいやくしさん
履行義務は充足しているが、請求する権利がまだ無条件ではないため、売掛金としては確定していない状態の資産。
契約負債けいやくふさい
顧客から対価を先に受け取っているが、まだ財やサービスを移転していないため、将来の履行義務が残っている状態の負債。
棚卸減耗たなおろしげんもう
帳簿上の数量より実地棚卸数量が少ないことで生じる損失。数量差異に基づく。
商品評価損しょうひんひょうかそん
商品の数量はあるが、品質低下や時価下落などで価値が下がったために認識する損失。
商品有高帳しょうひんありだかちょう
商品の受入と払出を数量と単価で記録し、期末商品や売上原価の把握につなげる帳簿。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:29中心概念2027年度の棚卸資産と収益認識を、通常販売と複数履行義務の両方から扱う。
  3. 1:24重要用語履行義務、契約資産、契約負債、棚卸減耗、商品評価損、商品有高帳
  4. 2:18基本ルール契約、履行義務、引渡し、請求権、入金の順で事実を確認する。 複数の商品やサービスは、履行義務ごとに売上計上時点を判定する。 履行済みでも請求に条件が残るなら、売掛金ではなく契約資産を検討する。 商品は数量の減少と価値の低下を分けて判定する。
  5. 2:42判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:23確認ケース14月1日、A商品とB商品を合わせて330,000円で販売する契約を結んだ。独立販売価格はA商品120,000円、B商品210,000円で、対価はB商品の引渡し後にまとめて請求できる。4月10日にA商品を引き渡し、4月25日にB商品を引き渡した。4月25日に全額を掛けとした。各日の仕訳を示しなさい。なお、金額配分は独立販売価格の比で行う。
  7. 3:47確認ケース26月1日、C商品とD商品を合計220,000円で販売する契約を結び、顧客から全額を現金で受け取った。独立販売価格はC商品80,000円、D商品140,000円である。6月5日にC商品を引き渡し、6月20日にD商品を引き渡した。各日の仕訳を示しなさい。
  8. 5:26確認ケース3決算日において、商品勘定の帳簿残高は160,000円であり、これは帳簿数量80個、1個当たり原価2,000円に基づく。実地棚卸の結果、数量は76個であった。さらに、この76個のうち販売可能な正味売却価額は1個当たり1,850円と見積もられた。棚卸減耗と商品評価損を区別して決算整理仕訳を示しなさい。
  9. 6:47よくある誤り入金予定日や請求日を見て売上を計上してしまう。 履行済みで請求に条件が残るものを売掛金として処理してしまう。 契約負債を前受金の感覚だけで考え、未履行部分との対応を見落とす。 棚卸減耗と商品評価損を同じ理由の損失としてまとめてしまう。 商品有高帳で数量だけを追い、単価や金額との対応を確認しない。
  10. 8:59まとめ商品売買と収益認識では、まず契約内容を見て履行義務を分け、引渡しによって顧客へ移転した部分だけ売上を認識します。履行済みでも請求権が無条件でなければ契約資産、先に代金を受け取って未履行なら契約負債です。さらに、棚卸資産は数量差異による棚卸減耗と価値低下による商品評価損を区別して考えます。商品有高帳を使って数量と単価を対応させることが、期末商品と売上原価の理解につながります。
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