売掛金・買掛金から電子記録債権へ:回収と支払を一つの流れでつかむ
売掛金・買掛金、電子記録債権・電子記録債務、営業外電子記録債権、クレジット売掛金、ファクタリング、貸倒引当金を、発生から決済まで一つの流れで整理します。営業取引か営業外取引かの判定を軸に、勘定科目の選び方を確認します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
取引が営業取引か営業外取引かを判定し、発生・決済・譲渡の各段階で使う勘定を選べる。
- 電子記録債権と受取手形を混同せずに区別できる。
- ファクタリングで債権が消滅する場合の処理を説明できる。
- 貸倒引当金の対象となる債権残高を判定できる。
前提知識
- 簿記3級の借方・貸方、売掛金・買掛金の基本。
要点
- 営業取引か営業外取引かで、売掛金か営業外電子記録債権かを分ける。
- 電子記録債権・電子記録債務は、既存の債権債務の決済手段が変わったものとして捉える。
- ファクタリングは売上計上ではなく、債権譲渡と手数料の処理として考える。
- 貸倒引当金は期末に残っている債権残高を基礎に判断する。
判断のルール
- 取引の原因を確認して、営業取引か営業外取引かを先に判定する。
- 次に、売掛金・買掛金・電子記録債権・電子記録債務・営業外電子記録債権などの科目を選ぶ。
- 電子記録化は収益や費用の追加計上ではなく、債権債務の振替として処理する。
- ファクタリングでは、譲渡した債権総額、受取額、差額の手数料を分けて仕訳する。
例題
例題1商品販売後に売掛金を電子記録債権へ切り替え、のちに回収した場合
当社は商品を120,000円で掛け販売した。その後、得意先の依頼により当該売掛金120,000円を電子記録債権に切り替え、満期日に当座預金へ全額入金された。必要な仕訳を示しなさい。
答え(商品を掛けで販売した場面)借方:売掛金 120,000/貸方:売上 120,000 (売掛金を電子記録債権に切り替えた場面)借方:電子記録債権 120,000/貸方:売掛金 120,000 (満期日に当座預金へ入金された場面)借方:当座預金 120,000/貸方:電子記録債権 120,000
考え方最初の事実は商品販売なので、営業取引から生じた債権です。したがって発生時は売掛金を使います。次の事実は、既存の売掛金が電子記録による決済に切り替わっただけであり、新たな売上ではありません。よって売掛金を減らし、電子記録債権へ振り替えます。最後は満期日に実際に入金されているため、資産の中で電子記録債権が減少し、当座預金が増加します。営業外の取引ではないので、営業外電子記録債権は使いません。
確かめ各仕訳で借方合計と貸方合計は120,000円で一致する。流れとしても、売掛金発生→電子記録債権へ振替→預金化となり、期末に債権は残らない。
例題2備品売却代金の未収分を営業外電子記録債権で処理する場合
当社は備品を80,000円で売却し、代金は後日受け取ることとした。備品の取得原価は150,000円、減価償却累計額は90,000円である。後日、この未収代金80,000円は電子記録化され、さらに満期日に普通預金へ入金された。必要な仕訳を示しなさい。
答え(備品を売却した場面)借方:未収入金 80,000、減価償却累計額 90,000/貸方:備品 150,000、固定資産売却益 20,000 (未収代金を営業外電子記録債権に切り替えた場面)借方:営業外電子記録債権 80,000/貸方:未収入金 80,000 (満期日に普通預金へ入金された場面)借方:普通預金 80,000/貸方:営業外電子記録債権 80,000
考え方最初に見るべき事実は、売却したのが商品ではなく備品だという点です。したがって営業取引ではなく、売掛金は使いません。売却時点では、帳簿価額を計算すると150,000円−90,000円=60,000円です。売却価額80,000円との差額20,000円は固定資産売却益になります。代金はまだ受け取っていないため、いったん未収入金で処理します。その後、この営業外の未収代金が電子記録化されたので、未収入金を営業外電子記録債権へ振り替えます。最後に入金時は営業外電子記録債権を消して普通預金を増やします。
確かめ売却時の借方合計は80,000+90,000=170,000円、貸方合計は150,000+20,000=170,000円で一致する。帳簿価額60,000円、売却価額80,000円より売却益20,000円となり整合する。
例題3売掛金をファクタリングし、手数料を差し引かれて資金化した場合
当社は商品を200,000円で掛け販売していた。その後、この売掛金200,000円をファクタリング会社へ譲渡し、手数料6,000円を差し引かれた194,000円が当座預金に入金された。譲渡により当社の債権は消滅するものとする。必要な仕訳を示しなさい。
答え(商品を掛けで販売した場面)借方:売掛金 200,000/貸方:売上 200,000 (売掛金を譲渡し、手数料差引後の金額が入金された場面)借方:当座預金 194,000、売上債権売却損 6,000/貸方:売掛金 200,000
考え方最初の事実は商品販売なので、発生した債権は売掛金です。次にファクタリングでは、債権そのものを譲渡して資金化しています。問題文で債権が消滅すると示されているので、売掛金200,000円は全額取り崩します。実際に受け取ったのは194,000円で、差額6,000円は手数料に相当する損失です。したがって、当座預金194,000円と売上債権売却損6,000円を借方に計上し、貸方で売掛金200,000円を消します。売上の修正ではなく、債権譲渡に伴う処理として考えるのがポイントです。
確かめ2本目の仕訳は借方194,000+6,000=200,000円、貸方200,000円で一致する。譲渡後は売掛金残高が消え、手取額と手数料の内訳も合っている。
よくある間違い
電子記録債権を別の決済手段の科目で処理してしまう。
備品売却代金の未収分を売掛金としてしまい、営業外の区分を落とす。
ファクタリングの手数料を売上の修正として処理してしまう。
電子記録化の時点で売上や仕入を再度計上してしまう。
貸倒引当金の対象に、すでに回収済みや譲渡済みの債権まで含めてしまう。
この講の用語
- 電子記録債権でんしきろくさいけん
- 営業取引から生じた債権が、電子記録による方法で管理・決済されるもの。売掛金から切り替わることがある。
- 電子記録債務でんしきろくさいむ
- 営業取引から生じた債務が、電子記録による方法で管理・決済されるもの。買掛金から切り替わることがある。
- 営業外電子記録債権えいぎょうがいでんしきろくさいけん
- 商品売買以外の取引から生じた債権が電子記録化されたもの。固定資産売却代金の未収分などが該当する。
- クレジット売掛金くれじっとうりかけきん
- クレジット販売で生じる債権。通常の売掛金と分けて処理することがある。
- ファクタリングふぁくたりんぐ
- 売掛債権などを譲渡して早期に資金化する取引。債権が消滅する条件では、譲渡した債権を取り崩して処理する。
- 貸倒引当金かしだおれひきあてきん
- 決算時に、債権の回収不能に備えて見積計上する引当金。期末に残る対象債権を基礎に設定する。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:22中心概念2027年度の電子決済を中心に、債権債務の発生・回収・支払・譲渡・決算評価を扱う。
- 1:01重要用語電子記録債権、電子記録債務、営業外電子記録債権、クレジット売掛金、ファクタリング、貸倒引当金
- 1:41基本ルール取引の原因を確認して、営業取引か営業外取引かを先に判定する。 次に、売掛金・買掛金・電子記録債権・電子記録債務・営業外電子記録債権などの科目を選ぶ。 電子記録化は収益や費用の追加計上ではなく、債権債務の振替として処理する。 ファクタリングでは、譲渡した債権総額、受取額、差額の手数料を分けて仕訳する。
- 2:06判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 2:40確認ケース1当社は商品を120,000円で掛け販売した。その後、得意先の依頼により当該売掛金120,000円を電子記録債権に切り替え、満期日に当座預金へ全額入金された。必要な仕訳を示しなさい。
- 3:04確認ケース2当社は備品を80,000円で売却し、代金は後日受け取ることとした。備品の取得原価は150,000円、減価償却累計額は90,000円である。後日、この未収代金80,000円は電子記録化され、さらに満期日に普通預金へ入金された。必要な仕訳を示しなさい。
- 4:29確認ケース3当社は商品を200,000円で掛け販売していた。その後、この売掛金200,000円をファクタリング会社へ譲渡し、手数料6,000円を差し引かれた194,000円が当座預金に入金された。譲渡により当社の債権は消滅するものとする。必要な仕訳を示しなさい。
- 5:50よくある誤り電子記録債権を別の決済手段の科目で処理してしまう。 備品売却代金の未収分を売掛金としてしまい、営業外の区分を落とす。 ファクタリングの手数料を売上の修正として処理してしまう。 電子記録化の時点で売上や仕入を再度計上してしまう。 貸倒引当金の対象に、すでに回収済みや譲渡済みの債権まで含めてしまう。
- 7:33まとめこの分野は、取引の原因が営業取引か営業外取引かを見分け、その後に決済方法として売掛金・買掛金から電子記録債権・電子記録債務へどう移るかを整理するのが基本です。固定資産売却なら営業外電子記録債権、商品販売なら売掛金やクレジット売掛金という区分を明確にし、ファクタリングでは債権譲渡と手数料を分けて処理します。最後に期末残高を確定して、貸倒引当金の対象を判断します。
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