標準原価・直接原価・CVP会員向け9:60

直接原価計算とCVP分析:限界利益から利益計画を考える

変動費と固定費を区別し、限界利益から直接原価計算による損益計算書、損益分岐点、目標利益達成販売量までを一つの流れで整理します。さらに、全部原価計算との利益差と固定費調整の意味、値下げや販売量減少が営業利益に与える影響も確認します。

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この講で分かるようになること

変動費と固定費を分け、限界利益から損益分岐点と目標利益達成販売量を計算できる。

  • 全部原価計算と直接原価計算の利益差を説明できる。
  • 固定費調整の意味を理解する。
  • 販売量・価格・変動費の変化が利益へ与える影響を説明できる。

前提知識

  • 工業簿記の原価分類、損益計算書、百分率・方程式の基本。

要点

  1. 限界利益は売上高から変動費を引いた額である。
  2. 損益分岐点は固定費を限界利益で回収する地点である。
  3. 目標利益を求めるときは固定費に目標利益を加えて計算する。
  4. 価格や変動費が変わったら限界利益率を必ず再計算する。
  5. 在庫増減が全部原価計算と直接原価計算の利益差を生む。

判断のルール

  • まず費用を変動費と固定費に分ける。
  • 売上高から変動費を引いて限界利益を求める。
  • 限界利益から固定費を差し引いて営業利益を求める。
  • 損益分岐点は固定費÷限界利益率、または固定費÷単位当たり限界利益で計算する。
  • 条件が変化した場合は変化後の売価と変動費で最初から再計算する。

例題

例題1直接原価計算による損益計算書を作る

ある製品の当月データは次のとおりである。販売数量1,000個、販売単価2,000円、単位当たり変動製造原価900円、単位当たり変動販売費100円、固定製造原価300,000円、固定販売費・一般管理費200,000円。直接原価計算による営業利益を求めなさい。

答え売上高 2,000,000円 変動売上原価 900,000円 変動販売費 100,000円 変動費合計 1,000,000円 限界利益 1,000,000円 固定製造原価 300,000円 固定販売費・一般管理費 200,000円 固定費合計 500,000円 営業利益 500,000円

考え方まず、販売数量1,000個と販売単価2,000円から売上高は2,000,000円と判断する。次に、変動費は販売量に比例するので、変動製造原価は900円×1,000個で900,000円、変動販売費は100円×1,000個で100,000円となる。売上高からこれらの変動費合計1,000,000円を引くと限界利益は1,000,000円である。さらに、固定製造原価300,000円と固定販売費・一般管理費200,000円は当月の固定費として全額差し引く。したがって営業利益は1,000,000円−500,000円で500,000円となる。

確かめ限界利益の検算:売上高2,000,000円−変動費1,000,000円=1,000,000円。営業利益の検算:限界利益1,000,000円−固定費500,000円=500,000円。単位当たり限界利益でも確認でき、2,000円−900円−100円=1,000円、1,000円×1,000個=1,000,000円。

例題2損益分岐点売上高と目標利益達成販売量

ある会社では、製品1個の販売単価は5,000円、単位当たり変動費は3,000円、月間固定費は600,000円である。損益分岐点販売量、損益分岐点売上高、目標営業利益200,000円を達成するための販売量を求めなさい。

答え単位当たり限界利益 2,000円 損益分岐点販売量 300個 損益分岐点売上高 1,500,000円 目標営業利益200,000円達成販売量 400個

考え方最初に、販売単価5,000円から単位当たり変動費3,000円を引き、単位当たり限界利益を2,000円と判断する。損益分岐点は営業利益がゼロなので、固定費600,000円をこの2,000円で回収できる数量を求めればよい。よって600,000円÷2,000円で300個となる。売上高は300個×5,000円で1,500,000円である。次に目標営業利益200,000円が必要な場合は、固定費だけでなくその利益も回収しなければならないため、600,000円+200,000円を単位当たり限界利益2,000円で割る。したがって必要販売量は400個となる。

確かめ損益分岐点の検算:300個販売時の限界利益は2,000円×300個=600,000円で、固定費600,000円と一致し営業利益は0円。目標利益の検算:400個販売時の限界利益は2,000円×400個=800,000円、固定費600,000円を引くと営業利益200,000円。

例題3値下げと販売量減少のもとで営業利益を比較する

ある製品について、通常時は販売数量800個、販売単価4,000円、単位当たり変動費2,400円、固定費700,000円である。競合参入後、販売単価を3,800円に引き下げ、販売数量は750個に減少したが、単位当たり変動費と固定費は変わらない。このとき、通常時と競合参入後の営業利益をそれぞれ求め、どちらがいくら小さいかを答えなさい。

答え通常時:売上高 3,200,000円、変動費 1,920,000円、限界利益 1,280,000円、営業利益 580,000円 競合参入後:売上高 2,850,000円、変動費 1,800,000円、限界利益 1,050,000円、営業利益 350,000円 比較結果:競合参入後の営業利益は通常時より230,000円小さい

考え方通常時は、売上高が4,000円×800個で3,200,000円、変動費が2,400円×800個で1,920,000円となる。したがって限界利益は1,280,000円、固定費700,000円を引いて営業利益は580,000円である。次に競合参入後は、値下げがあるため限界利益率をそのまま使わず、売価3,800円と変動費2,400円から単位当たり限界利益を再計算する必要がある。売上高は3,800円×750個で2,850,000円、変動費は2,400円×750個で1,800,000円、限界利益は1,050,000円、営業利益は350,000円となる。両者を比較すると、580,000円−350,000円で230,000円だけ小さくなっている。

確かめ通常時の検算:単位当たり限界利益は4,000円−2,400円=1,600円、1,600円×800個=1,280,000円、ここから固定費700,000円を引いて580,000円。競合参入後の検算:単位当たり限界利益は3,800円−2,400円=1,400円、1,400円×750個=1,050,000円、ここから固定費700,000円を引いて350,000円。利益差は580,000円−350,000円=230,000円。

よくある間違い

固定製造原価を変動費に入れてしまう。

損益分岐点でも利益が出ると考えてしまう。

目標利益の問題で固定費だけを回収する計算にしてしまう。

値下げ後も以前の限界利益率をそのまま使ってしまう。

在庫が増えたのに直接原価計算の利益が大きいと判断してしまう。

この講の用語

直接原価計算ちょくせつげんかけいさん
変動製造原価を製品原価とし、固定製造原価は期間費用として処理する原価計算の考え方。
変動費へんどうひ
操業度や販売量の増減に応じて総額が変化する費用。
固定費こていひ
一定の範囲では操業度や販売量が変わっても総額が大きく変わらない費用。
限界利益げんかいりえき
売上高から変動費を差し引いた額で、固定費の回収と利益の源泉となる。
限界利益率げんかいりえきりつ
限界利益を売上高で割った割合。損益分岐点売上高の計算に用いる。
固定費調整こていひちょうせい
在庫増減によって生じる全部原価計算と直接原価計算の利益差を説明する調整。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:21中心概念2級の直接原価計算、固定費調整、CVP・損益分岐・目標利益を扱う。
  3. 1:07重要用語直接原価計算、変動費、固定費、限界利益、限界利益率、固定費調整
  4. 2:03基本ルールまず費用を変動費と固定費に分ける。 売上高から変動費を引いて限界利益を求める。 限界利益から固定費を差し引いて営業利益を求める。 損益分岐点は固定費÷限界利益率、または固定費÷単位当たり限界利益で計算する。 条件が変化した場合は変化後の売価と変動費で最初から再計算する。
  5. 2:28判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:23確認ケース1ある製品の当月データは次のとおりである。販売数量1,000個、販売単価2,000円、単位当たり変動製造原価900円、単位当たり変動販売費100円、固定製造原価300,000円、固定販売費・一般管理費200,000円。直接原価計算による営業利益を求めなさい。
  7. 4:04確認ケース2ある会社では、製品1個の販売単価は5,000円、単位当たり変動費は3,000円、月間固定費は600,000円である。損益分岐点販売量、損益分岐点売上高、目標営業利益200,000円を達成するための販売量を求めなさい。
  8. 5:18確認ケース3ある製品について、通常時は販売数量800個、販売単価4,000円、単位当たり変動費2,400円、固定費700,000円である。競合参入後、販売単価を3,800円に引き下げ、販売数量は750個に減少したが、単位当たり変動費と固定費は変わらない。このとき、通常時と競合参入後の営業利益をそれぞれ求め、どちらがいくら小さいかを答えなさい。
  9. 6:50よくある誤り固定製造原価を変動費に入れてしまう。 損益分岐点でも利益が出ると考えてしまう。 目標利益の問題で固定費だけを回収する計算にしてしまう。 値下げ後も以前の限界利益率をそのまま使ってしまう。 在庫が増えたのに直接原価計算の利益が大きいと判断してしまう。
  10. 9:07まとめ直接原価計算では、変動費と固定費を分け、売上高から変動費を引いた限界利益を中心に利益を考えます。損益分岐点は固定費をちょうど回収する地点、目標利益は固定費に目標額を上乗せして求めます。価格や変動費が変われば限界利益率は変わるため、必ず再計算が必要です。また、全部原価計算との利益差は固定製造原価が在庫に含まれるかどうかで生じ、在庫増減と結び付けて理解します。
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